山形県立博物館で講演会を実施いたしました。

上廣歴史資料学研究部門は山形県立博物館と協力し、年に2回、古文書歴史講座を開催しております。本年の1回目は、20171113日(日)に山形県立博物館講堂にて実施され、部門助教の友田が講師を担当しました。
講演のテーマは「幕末維新期の情報と思想―米沢藩士・甘糟継成と宮島誠一郎」。政治の世界で適切な行動を取るためには、いつの世でも正確な情報の獲得は欠かせませんが、幕末維新期という激動期あってはなおさらです。米沢藩においても情報の必要性を痛感して、それを積極的に入手し、思想を紡いでいった人物がいました。今回取り上げた甘糟継成と宮島誠一郎もそんななかの一人でした。
甘糟は、上杉二十四将の一・甘糟備後景継の末裔。国内外の事情に通じて多くの書物を著し、博覧強記をもって知られた人物です。明治元年(1868)の戊辰戦争では軍務参謀として越後に出征し、敗戦後は戦犯に指名されそうになりますが、辛くも免れると、新政府に登用されます。しかし、それもつかの間、病を得て37歳の若さでこの世を去ります。宮島は、幕末期、米沢藩の周旋方として情報の収集や他藩との折衝にあたった人物で、とくに会津藩謝罪歎願に奔走した戊辰戦争時の活躍が有名です。維新後は米沢藩の藩政改革に尽し、甘糟の死後、彼に代って政府に出仕、以後、諸職を歴任しました。政府官僚としては、左院という立法機関に在職中の明治5年に、「立国憲議」という意見書を起草し、政府内でいち早く立憲政体の樹立を唱えたことで知られています。動乱のさなか、二人の思想の形成に、情報がどのような影響を与えたのか、そして、二人はいかにして藩内で存在感を発揮するに至ったのか、それらを考えることを通じて、幕末維新期において情報がもつ意義を考察したのが、今回の講演です。
参加者は山形県立博物館の古文書講座に参加されている方を中心とする21名。2時間以上に及ぶ講演となりましたが、みなさん一様に熱心に耳を傾けてくださいました。ご参加いただいたすべての方にこの場を借りてお礼申し上げます。
部門は、今後とも東北各地の博物館等と連携し、さまざまな企画を通じて、地域に貢献していきたいと思っております。

講演会のようす

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