山元町歴史民俗資料館第69回企画展「歴史資料が語る近世・近代の社会-大條家文書・坂元村記録の調査から-」開催報告(竹原万雄)
部門では、山元町歴史民俗資料館と協働し、令和元年(2019)より江戸時代に当地を治めていた大條(おおえだ)家の歴史資料と、明治以降の行政文書である坂元村記録の調査を進めてきました。本企画展では、その研究成果を紹介しました。
大條家の資料からは、大條氏の系図などを含めた「家の歴史」、伊達政宗黒印状などから主君伊達氏との関係、大條氏が本拠とした坂本要害(城)や城下町の絵図などを取り上げました。貞享4年(1687)の絵図では、家中屋敷が拡大し、城下では道路の整備が進められており、それ以前の絵図と比べると田地を侍屋敷に転用していることもわかります。江戸時代を通じて都市化・宅地化していく動きがみられました。
坂元村記録からは、明治38年(1905)の大凶作と翌年の火災をめぐる救済活動、大正・昭和初期の坂元の村治民育に関する重要事項が掲載された『坂元月報』について紹介しました。救済活動では、米・乾野菜・小麦粉・蕎麦・黒パン・馬鈴薯・里芋・味噌・醤油といった食料品、衣類・毛布、児童の学用品などの物品が配布されていました。坂元村記録には、こうした配布物品の受領証が数多くのこされており、地域の復興過程に多様な救済活動があったことを伝えています。
11月10日には、関連企画として「講座:地域の歴史を学ぶ◎山元「江戸・明治時代の坂元」」を開催しました。野本禎司(開智国際大学教育学部准教授)「御殿様と地域の歴史-伊達家・大條家・坂本要害-」では、坂元の「殿様」である大條氏と家中・領民の関係性について、仙台藩5代藩主伊達吉村が坂元へやってきた「坂元御成」への対応を通して一体感が醸成されたことなどを丁寧にご紹介いただきました。竹原万雄「明治39年坂元大火をめぐる救済活動」では、火災からの復興計画として養蚕資金補助を通して自活を目指す救済が行われたことなどを取り上げました。
本企画展を通して、近世・近代の坂元の歴史を語る資料の魅力を知っていただき、当地の研究がより活発化することを祈念いたします。
【関連資料・URL】
本ウェブサイト 「ニューズレター」所収
別冊史の杜第11号
huminomori_bessatsu11.pdf
本ウェブサイト 「上廣歴史資料学研究部門デジタルコレクション」所収
「山元町歴史民俗資料館所蔵坂元村記録」
https://uehiro-tohoku.net/investigation-cat/miyagi
写真 企画展風景(山元町歴史民俗資料館)