コラム:竹駒神社馬事博物館所蔵資料について(渡辺清子)
岩沼市の竹駒神社境内には、「馬事博物館」という昭和13(1938)年竣工の近代建築があります。本館は、当神社の創建1100年を記念して建てられ、全国で唯一、馬に関するものだけを集めた博物館として翌年に開館しました。
建物は、境内景観に配慮した和洋折衷の外観と保存状態の良さが大きく評価され、令和3(2021)年に国登録有形文化財になっています。扉をくぐると、全長約2.8mの伊達政宗公騎馬像(石膏像)が拝観者を出迎えます。この像は、仙台城跡の伊達政宗公騎馬像(銅像)の試作の過程で作られましたが、作者の小室 達(とおる)が帝展出品のために改めて石膏像として仕上げたものです。本館の像は、現存する数少ない小室の大型オリジナル作品であり、今年3月6日付で岩沼市の有形文化財に指定されました。
収蔵資料は前述の騎馬像を除き、桃生郡北村(現:石巻市)出身の実業家・木村 匡(きょう)から1,100点以上寄贈されたものと伝えられています。
昨年、その手がかりとなる目録(草稿と抜き刷り)が発見されました。このうちの草稿(写真)には、本館に寄贈される直前の昭和13年まで収集品に関する鉛筆書き(木村の書き込み)がありました。目録には、馬好きで知られた木村が、馬具・書画・焼物から民芸品にいたるまで馬に関するものを手当たり次第に集めていたことや、当時の軍・皇室(宮家)関係、彼が長く赴任していた台湾の知人らから譲り受けたという来歴も、明確に記されています。これらの資料は、本館に寄贈される以前、博覧施設を備えた当時の宮城県図書館の寄託資料として展示され、話題になっていた貴重なもののようです。
目録の内容と実物との照合はこれからですが、本館創建の時代背景がわかるような展示に反映していきたいと思います。 (竹駒神社 祭儀部教化講務課 学芸員)
(写真1)『馬事参考品目録(草稿)』大正12(1923)年~昭和13年
撮影:上廣歴史資料学研究部門
(写真2) 草稿の内容
撮影:同上
(参考)
竹駒神社 2023『竹駒神社馬事博物館 建物調査整備報告書』
竹駒神社 2024『竹駒神社馬事博物館 伊達政宗公騎馬像修復報告書』