開催報告:令和5年度すかがわ歴史講座(荒武賢一朗)

 毎年11月に福島県の須賀川市立博物館で「すかがわ歴史講座」が開かれています。この講座は、須賀川市の学芸員のみなさんが日頃の研究成果を市民の方々へ発信される貴重な機会ですが、2019年より部門も主催に加えていただき、講師を派遣しています。
 令和5年度は「選べる!すかがわ歴史講座」(全4回)のシリーズで、「江戸時代の絵画学習法」「長沼焼と近隣窯」「すかがわの文学碑を訪ねて」という興味深いテーマが紹介され、部門からは2023年11月25日(第4回)に荒武賢一朗「須賀川郷士 相楽家の由緒と社会活動」の演題で近世須賀川に関するお話しをいたしました。
 相楽家は結城氏を祖先として、江戸時代初期に須賀川町へ移り住み、初代治左衛門貞次より代々「郷士(ごうし)」の身分を得て、町政運営のリーダーを務めました。現在、須賀川市と部門では相楽家文書の調査を開始し、その歴史的経緯について研究しています。講座では、①郷士とはどのような存在か、②相楽家9代治左衛門貞幹(さだもと)が自らの足跡をまとめた「一代之事」を紹介し、③結城氏一統の交流を古文書から明らかにする、という主題をもとに進めました。
 領主(会津→白河)から郷士という身分を与えられた相楽氏は、須賀川町の運営に尽力するとともに、町人たちと領主役所をつなぐ立場にあり、自己認識として「武士」であることの誇りを持っていたことが記録からわかります。その郷士たるプライドは代々継承されて9代貞幹は先祖の旧記を求め、文政11年(1828)に仙台領・庄内領を歴訪し、同じ由緒を持つ結城氏一統の末裔たちと交流をしました。加えて、江戸時代に入ってから相楽家より枝分かれした結城家(水戸藩士)との親密な関係も書状のやりとりなどで明らかになります。この水戸結城家成立には、徳川光圀(水戸徳川家2代)が強く関わっていたことも新たな発見です。
 あわせて、須賀川市立博物館では秋季企画展「文字の力」(10月24日~12月3日)が開催されました。この展示では、墨書土器などの出土文字から中世および近世の古文書、さらには「書」「書画」を含めた資料が紹介されました。文字の大好きな私たちにとって、魅力ある展覧会で、勉強をさせていただいたことに感謝いたします。

関連コラム:「拓本の力」(管野和恵)
https://uehiro-tohoku.net/works/2023/6789.html

 

 

 

 

 

 

 

(写真)すかがわ歴史講座(2023年11月25日 於須賀川市立博物館展示室)