開催報告:上廣歴史資料学研究部門パネル展示・第5回みちのく歴史講座(荒武賢一朗)

 2023年11月2日から29日まで、仙台市営地下鉄国際センター駅1階のギャラリースペースで東北大学東北アジア研究センター上廣歴史資料学研究部門パネル展示「侍たちの江戸時代―仙台藩の組織と政策―」を開催いたしました。部門教員および外部の専門家を含めた東北アジア研究センター共同研究「仙台藩における支配機構と政策決定の総合的研究」(2022~23年度)で明らかになった成果をコンパクトにわかりやすく、来場者のみなさんに御覧いただこうという試みでした。
 部門ではここ数年、宮城県内の歴史資料保全活動を通じて、これまで存在が確認されていなかった仙台藩の武家に関する古文書を調査してきました。これら文献資料と、東北大学埋蔵文化財調査室が手がける東北大学川内キャンパスの発掘調査をあわせて参照することで、仙台藩の歴史に新しい1ページを加えることができるのではないか、という期待によって「侍たちの江戸時代」というテーマを設定しました。
 東北地方を代表する大名家で、全国各地と比較して武士の占める割合が高かったといわれる仙台領内の特徴は実に多彩ですが、発掘調査の事例が少なかった二の丸地区や、北地区(川内の武家屋敷が建ち並んでいた地域)からいろいろな用途の陶磁器類が多数出土したこと、仙台藩の重臣であった大條(おおえだ)家では江戸時代から文書管理を進めていたこと、さらには仙台藩にとって重要な政治拠点であった江戸屋敷の運営に関する文書など、これまで意識されなかった新たな研究素材の紹介をすることができました。
 関連企画として、11月11日午後には東北大学川内キャンパスで、部門主催の第5回みちのく歴史講座「侍たちの江戸時代―仙台藩の古文書分析―」を実施しました。コロナ禍の影響で2019年以来の開催となった講座には多くのみなさんにご来場を賜り、野本禎司氏「仙台藩宿老の政治的役割―後藤家文書の調査から―」、荒武賢一朗「一門衆の組織と運営―岩出山伊達家の事例から―」の2本をお聞きいただきました。
 今後も共同研究の成果をもとに、古文書が語る地域の歴史について考察を深めていきたいと思います。

東北大学東北アジア研究センター共同研究「仙台藩における支配機構と政策決定の総合的研究」
http://www2.cneas.tohoku.ac.jp/research/collabo01/114.html

東北大学埋蔵文化財調査室
https://web.tohoku.ac.jp/maibun/

◎『別冊史の杜』第10号 ⇒ PDF

 

 

 

 

 

(写真1)展示風景

 

 

 

 

 

 

 

(写真2)第5回みちのく歴史講座「侍たちの江戸時代」(2023年11月11日 於東北大学)