12年目のはじまり―上廣歴史資料学研究部門への期待―(千葉聡)

本センターの上廣歴史資料学研究部門は、長年にわたる公益財団法人上廣倫理財団より寄付と支援を得て、順調に成果を挙げてきた。いまや本センターになくてはならぬ看板部門となっている。本センターは東北アジアの地域研究をミッションとしているが、その大きな特徴は、東北アジアに日本を位置づけている点である。従って東北地方を中心とした日本史の研究を推進する上廣歴史資料学研究部門は、鍵を握る重要な存在であると言える。
日本では各所に古文書が残されており、一般の民家から中世の古文書が見つかることが多い。上廣歴史資料学研究部門では、荒武教授を中心に、古文書を中心とした歴史資料の保全活動では国内でトップクラスの実績を挙げている。白石市渡辺家文書や石巻市住吉勝又家資料など、実に数万点に及ぶ史料の整理や目録作成を進めており、これらの史料を通した歴史構築でも大きな成果が得られている。これら貴重な史料のデジタル化も進めており、一般公開による情報提供にも寄与している。こうした多数の史料から、仙台藩の政策や支配体制を解き明かす一方、地域史の研究も進めている。江戸期やそれ以前の人々の生き生きとした暮らしや社会が、鮮やかに描き出されているのである。
このように古文書が非常に多く、しかも良好な状態で残されているといった事例は海外には少なく、日本の歴史研究の大きなアドバンテージである。またこの日本の特殊事情を鑑みれば、上廣歴史資料学研究部門が行っている古文書研究は、世界的にもユニークかつトップレベルの歴史資料研究であると言えるだろう。
歴史資料保全を進めるとともに、その価値や重要性について、上廣歴史資料学研究部門は地域や行政と連携し、講演会、展示会を通じて、広く社会に伝える活動を進めている。その取り組みはメディアでも注目を集めており、新聞等でも活動状況が報道されている。
歴史研究は歴史の知恵から様々な恩恵を現代の私たちに与える。災害対策、新型コロナを始めとする疫病対策に至るまで、その貢献は幅広い領域に及んでいる。将来への不安が語られる時代であるがゆえに、歴史研究の意義は高まっている。未来と過去をつなぐ上廣歴史資料学研究部門に、今後さらなる活躍を期待したい。
(東北大学東北アジア研究センター・センター長)

 

 

 

 

 

写真1:古文書の封筒詰め作業

 

 

 

 

 

写真2:古文書の撮影作業