コラム:ヒメカツオブシムシと暮らした(竹内幸恵)

古文書整理は殺虫殺菌のため燻蒸後に進めますが、レスキュー時の整理などでは生きている虫に遭遇することもあります。今回のコラムは、古文書整理中に出会ったヒメカツオブシムシが成虫になるまでの観察日記です。

2015年12月21日 ― 幼虫を連れて帰った
東北大学災害科学国際研究所歴史資料保存分野にて某旧家所蔵の古文書撮影中に出てきたヒメカツオブシムシの幼虫。羊皮紙・毛皮・毛織物・畳・乾燥植物・絹などに付く害虫です。あまりお目にかかれない生体なので、小さなビニール袋に入れて自宅に連れ帰り、観察部屋を用意しました(写真1)。エサは、とりあえずカツオブシをあたえました。

2016年2月16日 ― 何回脱皮するんだ!?
観察開始後、初めての脱皮。4月9日、3回目の脱皮。そろそろ春だし成虫になるんじゃないかと思っていましたが、軽く夏も越してしまい、結局成虫になるまでに9回脱皮を繰り返しました(写真2)。

2016年9月24・25日 ― 動かない・・・蛹(さなぎ)だ!
出張から帰ると様子がおかしい。動かない。とうとう死んだか・・・と思いつつ、数日放置。9月29日そろそろ片付けようかと、観察部屋を見たら8回目脱皮の真っ最中。でも今までと違う形状。そこで文化財害虫カードなどで確認すると(写真3)、蛹になっていました。5つの切れ目みたいなものは何だろうと(写真4)、爪楊枝で切れ目を触ったら挟んできました。

2016年10月12日 ― 成虫になった!でも消えた!
蛹だったヒメカツオブシムシの脱皮が終わり、ついに成虫になりました(写真5)。蛹から脱皮するのってこんなに早いのかと驚きました。無事成虫になったので外に出してあげようと思いながら、2ヶ月後新しい幼虫を見つけて同居させたら、次の日成虫が消えました。堅い外側の羽を残して…。幼虫のエサになってしまった成虫よ、ごめん。

 

 

 

写真1

 

 

 

写真2

 

 

 

写真3

 

 

 

写真4

 

 

 

写真5

 

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