報告:第2回上廣歴史資料活用講座を実施しました(荒武賢一朗)
上廣歴史資料学研究部門では、各地に伝えられる古文書を保全するためにさまざまな活動を展開しています。そのなかで市町村の博物館・資料館・図書館、教育委員会の文化財担当のみなさんと協力をしながら、調査・研究を進めてきました。
自治体職員の方々と顔をあわせると、「古文書の写真撮影はどうしたらいいの?」とか、「文書目録はどのように作るのですか?」などの質問を受けることがあります。また、日頃の成果を積極的に情報発信していきたいというご相談も多いです。
そこで昨年度から「上廣歴史資料活用講座」として、職場は異なるけれども同じような仕事をされている人々が一堂に会し、歴史資料に関する情報共有の場を設けました。今年度は2020年2月29日(土曜)に東北アジア研究センターでおこない、私たち部門スタッフを含めて18名の出席を得ました。
講演では酒井一輔先生(聖心女子大学現代教養学部専任講師)に「市町村立博物館と教育普及・地域連携」と題したお話を頂戴しました。酒井先生は、伊能忠敬記念館(千葉県香取市)に学芸員として勤務された経験から、地域のなかで歴史・文化に関する市民的支持を得る方法とは何か、という模範例を示してくださいました。たとえば、入館者のうち若年層が少ないというデータから小学校の校外学習で利用してもらえるようなプログラム作りに取り組まれたことや、博物館に入って「何を見てよいかわからない」とする子どもたちに関心を持たせる方法など、とても興味深い事例の数々を知ることができました。当然のことですが、課題を発見して、どのように改善するかを念入りに分析しながら進めていく大切さを実感した次第です。
さらに野本禎司(部門助教)「古文書撮影について―撮影実習を含む―」、藤方博之(部門助教)「歴史資料調査と目録作成」では、古文書調査の方法を取り上げました。野本助教からは撮影に必要な道具、基本パターンを解説し、その後参加者にカメラや三脚を使って実習をしていただきました。本講座のタイトルにある「歴史資料の活用」は部門の目標でもあります。そのためには、藤方助教の示した文書目録の作成が不可欠で、実際にどのような形で進めていくのかをみなさんに知っていただけたと思います。
地域の歴史資料を守る最前線におられるみなさんと情報の共有を図ることができ、大変有意義な機会になりました。歴史資料の調査は、何から手を付けていいかわからないのですが、ひとつずつの作業を丁寧にやっていくことが何よりです。その結果、古文書のおもしろさや地域の特徴を社会へ発信できればと考えています。