コラム:銀杏の葉と古文書(竹内幸恵)
2012年より資料保全の活動に携わってきました。初めて関わる世界に戸惑いと驚きの日々。しかし毎日出会う古文書たちに少しずつ興味が湧いてきました。
大事に保存された和綴じの本や書状のクリーニング時、時々出てくる銀杏の葉。最初は栞の代わりか、押し葉にしたのかなくらいに思っていました。しかし出てくる頻度が多いような気がして少しだけ調べてみようと思いました。そんなとき現場において便利なツールになるのが、インターネットでの検索です。
検索ワードは「銀杏の葉 古文書」。そこでわかったのは銀杏の葉には防虫効果があること。なるほど和紙でつくられた和本や書状は虫喰いで穴だらけのものが見られます。
次に「銀杏の葉 防虫」で検索。どうやら色付いた銀杏の葉には「シキミ酸」という成分があり、防虫効果があることがわかりました。「シキミ酸」とは、樒(シキミ)という木などに含まれる成分であること、そして樒(シキミ)は仏事で使われることなどがわかりました(なお、樒と榊は見た目似ていますが榊は神事で使用)。
銀杏の葉は、黄色く色付いたものを洗い乾燥させて使用するらしいですが、効果は2年くらいということですので、古文書に挟み込んであった葉は期限切れです。当時(約150年くらい前)は紙も貴重であったと思われますし、和本などはとても大事に扱われていたのでしょう。こうして残してくださった昔の方々の思いを大切にして、古文書を未来に繋いでいく活動を続けていきたいと思います。
(いずれも筆者撮影)