公開シンポジウム「宮城発・自由民権運動再考」を開催しました。

2014年11月30日、東北大学片平キャンパスさくらホールにおいて公開シンポジウム「宮城発・自由民権運動再考」を開催しました。同シンポジウムは部門の共同研究「東北の自由民権運動」の一環として行なわれたものです。共同研究は、1970年代から1980年代にかけて一世を風靡した自由民権運動研究の再興をはかるとともに、東北近代史研究の活性化をもはかるもので、シンポジウムは宮城県下の自由民権運動、さらには仙台藩士出身の民権家千葉卓三郎や彼の起草したいわゆる「五日市憲法草案」を改めて考えようという意図のもと企画されました。当日の参加者は60~70名ほど。演者・演題は以下のとおりです。

①千葉昌弘(北里大学元教授)
「宮城県の自由民権運動研究―その成果と課題―」
②新井勝紘(専修大学文学部教授)
「日本憲法史上における五日市憲法の意義」
③松崎稔(町田市立自由民権資料館学芸員)
「五日市学芸講談会と千葉卓三郎」
④後藤彰信(宮城県農業高等学校教諭)
「自由民権運動から初期社会主義へ―その接続の諸相―」

千葉氏は全国的な自由民権運動研究の活性化のなかで宮城県ではどのような研究成果が生み出され、何が明らかになったのか、これからの課題は何なのかを論じられました。新井氏は昨今の改憲論議を念頭におきつつ「五日市憲法草案」の今日的意義を問い、明治16(1883)年の『朝野新聞』の記事から仙台における盲人や女性による民権結社の動きを紹介されました。松崎氏は、「五日市憲法草案」は五日市学芸講談会での討論をもとに千葉が起草したものという通説に再考を促し、千葉が五日市の人々に求めた議論の在り方とは何だったのか、五日市の豪農深沢権八は千葉の意を汲みいかに講談会を運営していこうとしたのかを考察されました。後藤氏は、社会主義の受容のされ方の変遷、初期社会主義者の世代論を切り口に、宮城において自由民権運動の成果はいかに初期社会主義運動に受け継がれたのかを考察されました。
講演終了後に設けられた討論の席では、演者とフロアとの間、さらには演者間で活発な質疑が交わされ、潜在的には依然自由民権運動への関心が高いことをうかがわせました。

公開シンポジウム「宮城発・自由民権運動再考」

討論のようす