コラム:御師三日市大夫次郎屋敷模型に関する調査(太田光俊)

私の勤務先の三重県総合博物館では、常設の基本展示室で近世の伊勢参りを紹介しています。展示室の中央には、2014年開館時に復元した参宮に訪れた人々を迎え入れた御師三日市大夫次郎の屋敷が設置されています。三日市大夫次郎は、関東東北に檀家を多数有した御師で、大きな屋敷が現在の三重県伊勢市岩渕町に存在していました。
この御師屋敷の模型には、年齢、性別、職業、住所、装いなど含めて何等かの史料に基づく設定を行い制作された人形を多数配置しています。道中日記、名所図会、浮世絵、概説書、研究論文などをかき集めて、少々時代が前後する所は目をつむり何とか設定しました。参宮客は三重大学の塚本明先生のご協力も得つつ、三日市大夫次郎屋敷での宿泊が記された①『本荘市史』通史編Ⅱ(1994年)同史料編Ⅳ(1998年)や、②『海陸道順達日記』(法政大学出版局、1991年)、③『安倍五郎兵衛天明三年伊勢詣道中記』(増田町文化財協会、1998年)などを選択し設定しました。
これらの設定は情報過多となるため、あえて展示では最小限しか示しませんでした。しかし、来館者に設定の苦労話や道中日記に基づく解説をすると大変興味を示して頂いたことから、2019年度に①②③の参宮客を選び解説シートを作成しました(HPで公開中 ※「★伊勢参りを学ぶワークシート」の部分にPDFを掲載しています)。当時は新型コロナウイルスの影響で細密な調査は不可能でしたが、現地では①③の史料の作成者の居住していた場所まで何とか到達できました。
軒並みな調査をしたに過ぎないのですが、三重から遠く離れた秋田で近世の町民・農民の伊勢参りの痕跡を確認できたことに大変興奮した覚えがあります。なお、伊勢参りの痕跡は全国にあることから、県外出張の際には目的業務の前後にできるだけ図書館に立ち寄り自治体史等の検索をしています。隙間仕事のゆっくりとした調査ですが、継続していきたいと思います。また、東北の伊勢参宮関連の史料情報などありましたら、ぜひご教示、ご相談ください。(三重県総合博物館 学芸員)

 

 

 

 

 

基本展示室

 

 

 

 

 

 

三日市大夫次郎屋敷門付近