今年は年始早々、これまでにない多難を予感させる年明けとなりました。とりわけ元日に石川県を震源に発生した能登半島地震では、震度7を記録した地震による家屋倒壊のみならず、能登半島や富山湾、新潟県の直江津までにおよぶ津波被害、輪島市街地で発生した大規模火災、地盤の液状化現象や山間部での土砂災害など、大規模かつ複合的な被害が発生しました。この災害でお亡くなりになられた方やご遺族のみなさまには心より哀悼の意を表すとともに、今も避難生活を余儀なくされるみなさまには、一日も早く平穏な生活を取り戻されることをお祈り申し上げます。
今回の被災地域においては、3週間近く経過した現在でも十分な支援物資が届かない状況があり、また孤立地域や学校児童・生徒を中心に集団での二次避難が進められていることもあり、状況は未だ予断を許さないところですが、今後の復旧・復興に向け、被災地域の文化遺産の救出に向けた動きも始まりつつあります。NPO法人宮城歴史資料保全ネットワーク(宮城資料ネット)でも現在、被災地域での資料レスキューに向けて情報支援等を行いつつ、全国各地の資料ネットと連携したレスキュー体制の構築に向けて議論を進めているところです。
さて、ご承知の方も多いと思いますが、宮城資料ネットは2003年7月26日に発生した「宮城北部連続地震」を契機に設立され、昨年、設立20周年を迎えました。この間、来るべき宮城県沖地震の発生に備える「歴史資料の防災」を掲げ、「災害前の資料保全」を活動の柱に据えてきましたが、一方でこの20年の間には、岩手・宮城内陸地震(2008年)、東日本大震災(2011年)、東日本台風(2019年)、福島県沖地震(2021・22年)と宮城県内では度重なる自然災害の発生を受け、その都度、災害から歴史遺産を守る取り組みを進めてまいりました。多くの方々からのご支援とネットワークにより活動を継続してこられましたこと、宮城資料ネット事務局を代表して心よりお礼申し上げます。
活動20周年にあたり、宮城資料ネットでは下記のプログラムにて、20周年シンポジウムを開催する予定をしております。
日時:2月23日(金・祝) 14:00~17:00
会場:東北大学大学院環境科学研究科 大講義室&オンライン(ハイブリッド開催)
主催:NPO法人宮城歴史資料保全ネットワーク
共催:東北大学災害科学国際研究所
東北大学大学院環境科学研究科
歴史文化資料保全の大学・共同利用機関NW事業東北大学拠点
その他共催・後援調整中
プログラム:
第一部「原点から」(進行:斎藤善之、川内淳史)
話題提供者:
青柳周一氏(滋賀大学教授、奥羽史料調査会元事務局長)
柳原敏昭氏(東北大学教授、宮城資料ネット副理事長、元仙台城の石垣を守る会)
吉川圭太氏(神戸大学講師、元宮城資料ネット事務局)
佐藤大介氏(東北大学准教授、宮城資料ネット副理事長)
第二部「活動のこれから―東日本大震災の経験を踏まえて―」(進行:斎藤善之、佐藤大介)
話題提供者:
蝦名裕一氏(東北大学准教授、宮城資料ネット理事)
天野真志氏(国立歴史民俗博物館准教授、元宮城資料ネット事務局)
安田容子氏(安田女子大学講師、元宮城資料ネット事務局)
川内淳史氏(東北大学准教授、宮城資料ネット事務局長)
コメンテーター:
本間英一氏、奥村弘氏(神戸大学副学長、歴史資料ネットワーク代表)、宮城資料ネット市民ボランティアのみなさん、ほか調整中
第一部では、宮城資料ネット設立の前提となった諸活動や活動初期のことを4名の方からの話題提供を受けつつ、資料ネット設立の意義について議論をしてみたいと思います。また第二部では宮城資料ネットの活動の大きな転機となった東日本大震災を踏まえて、現在の資料保全活動にその経験がいかに引き継がれているかを4名の方から話題提供を受けつつ、宮城資料ネットの活動の将来について考えたいと思います。あわせて資料ネットの活動に関わられた様々な方からのコメントや、参加者のみなさんからもご意見を出していただき、この20年間の資料ネットの意義や課題について共有する場としたいと思っています。
参加方法についてはオンラインフォームからの申込受付を予定しておりますが、準備ができ次第、宮城資料ネットのホームページ(http://miyagi-shiryounet.org/)にてお知らせいたします。
なお当日、シンポジウム終了後には懇親会の開催を予定しております。そちらを含めて、当日、多くの方からのご参加をお待ち申し上げております。
(東北大学災害科学国際研究所)