コラム:虫好きではないが虫嫌いでもない(竹内幸恵)

古文書撮影やクリーニング作業などの最中、虫を時々見かけますが、その中には、いわゆる「害虫」の部類に入る虫もいます。私は好きではありませんが嫌いでもありません。
ある筋で、まことしやかに囁かれる「虫好きの竹内」というウワサ。でもそれは誤解です。好きなのではなくて苦手ではないだけなのです。虫が苦手であるにもかかわらず運悪く遭遇してしまった方に代わり、少々のことでは驚かないという年齢のなせる技を身に付けた私が虫を片付けていただけなのです。
古文書は長い間所蔵者宅に大事に保管されていたものがほとんどなので、作業中に虫と出会うことはそう多くはありません。出会っても9割以上が死んでいます。しかも押し花状態。花ではなくて「押し虫」。
そこに入り込んだ時には生きていましたが、何らかの事情で死んでしまい、そのまま「押し虫」になったのでしょうか。「害虫」という一括りの名前で呼ばれて少し気の毒に思います。いや、決して虫の味方をしているわけではありません。古文書を撮影しながら、思考は古文書の内容とはかけ離れたところに時々飛んでいます。
彼ら彼女らは、いったいどれくらい古文書に挟まっていたのでしょうか。写真は古文書整理中に遭遇した「押し虫」です。昭和13年(1938)作成の古文書にいました。もちろん、この年に「押し虫」になったとは限りませんが、遭遇するたびに記録をとっていくと何か傾向が見えてくるかもしれません。

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(写真1)古文書から発見した「押し虫」