部門長就任にあたって(柳原敏昭)

  4月1日付で上廣歴史資料学研究部門の部門長に就任いたしました柳原と申します。本部門が2期10年に及ぶ実績を踏まえ、第3期に足を踏み出すというタイミングでの就任となりました。
 私の本務は文学研究科日本史研究室における教育・研究であり、また宮城歴史資料保全ネットワークの一員であることから、これまで本部門の活動について敬意をもって傍らより拝見してきたところです。歴史資料(史料)保全、史料の整理と目録作成、各種セミナーの実施、調査・研究に基づく数多くの出版物の刊行など活動にはめざましいものがあります。何より研究者による研究者のための活動ではなく、地域史に関心をもつ市民が史料保全や調査・研究を自ら担うというところまでを視野に入れている点に注目しておりました。
 さて本年、東北大学の文系学部は前身の法文学部の設立から数えて100周年を迎えました。創設期日本史研究室の教員であった喜田貞吉は、1925年に斎藤報恩会の援助を受けて奥羽史料調査部という調査機関を立ち上げます。そして、東北六県に北海道・新潟県を加えた地域での史料調査、アカデミズム・非アカデミズムの枠を超えた歴史研究(者)のネットワーク作りをめざします。当時の官立大学がもっぱら国家に貢献するものと考えられていた中で、地域を主体にした発想をとりえていたことには驚かされます。私には、本部門の活動が奥羽史料調査部のそれをより高い次元で引き継いでいるように見えます。奥羽史料調査部にとっての斎藤報恩会にあたるのが、本部門にとっての上廣倫理財団ということにもなり、その意味でも類似性を感じます。
 今後は傍らからではなく、当事者として本部門にかかわることとなります。非力ながら、微力を尽くす所存です。上廣倫理財団、東北アジア研究センター、そして地域の皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。