八戸市博物館で市民講座を行いました(鈴木淳世)

2021年12月18日(土)、青森県の八戸市博物館で「豪農・淵沢家の飢民救済」というタイトルの市民講座を行いました。これまでの私自身の研究成果を踏まえ、八戸南部家(表高20,000石・柳間席)の領国・八戸藩で飢饉が頻発・深刻化した理由を述べ、次いで江戸時代中期以降に飢民救済の役割を担っていた八戸藩領陸奥国九戸郡軽米町(現岩手県九戸郡軽米町)の豪農・淵沢の人びとの思想・行動について説明しました。特に、天保飢饉時の当主・淵沢円右衛門定啓(?~1871)が軽米町周辺の名子(隷属小農)・貧農層に稗を無利子で貸与していたことは詳しく話し、彼の積極的な飢民救済活動に儒学者・貝原益軒(1630~1714)の著書『大和俗訓』などからの思想的影響がうかがえることを紹介しました。また、彼が「軽米仲間」という書物貸借組織の一員であり、彼の書物受容が「軽米仲間」の思想傾向にもとづいていることも指摘しました。なお、当日は雪が降っていたにもかかわらず、会場には30人弱の参加者がいました。質疑応答時には専門的な質問があり、終了後にも「淵沢家・軽米仲間に興味を持った」などのコメントが寄せられました。
本講座は、2020年の夏季特別展「飢渇の郷土史-八戸ケガジ録-」に合わせて開催される予定のものでした(2020年は新型コロナウイルス感染症の流行が起きてしまい、延期されたという経緯がありました)。特別展自体は予定通り2020年に開催され、既に終了していますので、目にすることはできません。ただし、特別展の図録は現在でも販売されています。私自身、天明飢饉時の記録『天明三卯年日記』(八戸市博物館所蔵)の翻刻文と解題を掲載するという形で関与しました。本講座でも一部紹介しましたが、飢饉時の人びとの行動や飢饉の悲惨さなどがうかがえる貴重な史料ですので、興味があれば購入してみてください。

◎参考URL:八戸市博物館
https://hachinohe-city-museum.jp/