コラム:感染症から公文書管理の大切さを思う(佐々木結恵)
新型コロナウイルスが世界的に流行しています。日本国内でも感染拡大し、いつもと違った過ごし方で新年を迎えました。また1月7日、再び1都3県に緊急事態宣言が発令されました。コロナウイルス感染症の対策として、消毒を行う、換気を行う、密を避ける等が挙げられます。幕末から明治にかけて流行したコレラ対策は衛生の母、衛生行政の原点と言われます。どのような対策がとられたか、当時の国や県が行った感染症対策が公文書の中に残されています。
コレラとはコレラ菌によって引き起される急性の伝染病です。死亡率が高く、発病から1,2日で死ぬことから「コロリ」とも称されていました。明治10年(1877)、内務省が作成した「虎列刺豫防法心得」(写真1)には第1条から24条まで細かく消毒方法や、コレラ患者または疑わしい症状の患者が出た場合の対応策がまとめられています。第14条には「虎列刺流行ノ時ニ際シ地方長官ハ祭礼開市等無ニ益他方ノ人ノ羣衆スル件ヲ禁スヘシ」と記されており、群衆、密になることを禁止していたことが分かります。また、宮城県でも明治12年(1879)に流行していた地域に「当分諸祭礼興行等禁止」が出され、同様の感染症対策を行っていたことが記されています(写真2)。衛生の母とも称されるコレラ対策の公文書からは、現在のコロナウイルス感染症対策と同様の対策も知ることができ、今、何をすることが重要か判断できます。
このように公文書が残っているからこそ、過去の政策と現在の政策を比較し検証することができます。未来へと伝えるために記録し、資料を残し続ける重要性を再認識する必要が今あるのではないでしょうか。
(写真1)『内務省乙・丁・戊号達 勧業課』(宮城県公文書館所蔵 収蔵資料番号M10-0052)
(写真2)『管内布達-甲 土木課』(宮城県公文書館所蔵 収蔵資料番号M12-0088)