部門教員執筆参加の『生きるための地域史』が刊行されました。

野本禎司(部門助教)が執筆参加した、中村只吾・渡辺尚志編『生きるための地域史―東海地域の動態から』(勉誠出版、2020年10月)が刊行されました。
本書は、日本列島の中央部に位置する東海地域を対象として、各執筆者が人間にとって地域に生きることの意味について歴史的視点から考察を試みた9本の論文からなります。野本論文は「維新期における遠江国旗本家の動向―寄合五井松平家を中心に」と題して、遠江国(現静岡県西部)に知行所をもつ旗本家の維新期における「家」存続の特徴について検討しました。当国の旗本は新政府に早々に恭順の意を示したものの、明治に入ると徳川将軍家の領地(駿府藩)となったため、別な地に知行保障を求めなければならない地域特有の対応を迫られました。他方で知行所名主らは、自分の領主家の存続に固執はできず、入れ替わる支配者へ臨機応変に対応して、村や身近な地域の秩序維持を図ったことを明らかにしました。「鉢植え」といわれる江戸時代の領主と村で生きる知行所名主が選択した道が数年間で劇的に変化する地域であるがゆえに、江戸時代の統治構造のあり方をも鮮明にできると思い取り組みました。
本書全体は、編者の中村只吾(富山大学准教授)執筆の序章によると、「生きるための」という言葉にこだわり、また人間の生をめぐる多様性を捉えることを意図して、日本史学の専門家以外の読者にも参照してもらえるよう企図しております。なお本書は、センター主催「みちのく歴史講座」でもご講演をいただいた渡辺尚志一橋大学大学院教授の定年退職を記念した論集の一つでもあります。ぜひお手に取っていただけましたら幸いです。(野本禎司)

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