コラム:東北大学史料館と登録有形文化財(加藤諭)
近年、高等教育機関の建築、および建築図面が改めて着目されてきています。東北大学では2017年、片平キャンパスの明治から昭和にかけての5つの建築物が登録有形文化財に登録され、同年片平キャンパス自体も都市景観大賞特別賞を受賞しました。続いて2018年に国立近現代建築資料館では、開館5周年記念企画として「明治期における官立高等教育施設の群像」が開催され、ここでは旧制第二高等中学校や東北帝国大学医科大学の建築図面が出陳され好評を博することになりました。こうした動きに積極的に関わってきたのが、東北大学史料館です。東北大学史料館は、1963年日本で初めての大学アーカイブズとして設立された記念資料室を沿革に持ち、2011年の公文書管理法施行以降は、東北で唯一の国立公文書館等指定施設として、大学の公文書、また教職員学生など構成員の個人・関連団体文書をアーカイブし、大学の歴史、記録管理を担っている組織です。
現在の東北大学史料館は先にあげた登録有形文化財の1つである、片平キャンパスの旧附属図書館本館(東北大学で最初に建設された図書館)に置かれており、東北大学の各種パンフレットや大学を象徴する顔としても機能しています(コロナ禍で広報室と協力して2020年7月に作成した東北大学バーチャル背景集参照)。
http://www.bureau.tohoku.ac.jp/koho/book/notice.html
また、史料館の建物図面そのものも、国立近現代建築資料館にも出陳された他の当館所蔵図面とともに2019年、「官高等教育機関営繕組織近代建築図面(東北帝国大学営繕課旧蔵)」として、登録有形文化財(美術・工芸)として登録されました。これは国立大学では京都大学に次いで二例目となります。従来、大学アーカイブズは資料の保存・整理に力点が置かれてきましたが、公文書のあり方が問われている昨今、大学の記録の価値を広く伝え、活用していくこともまた重要な役割となってきています。
(東北大学学術資源研究公開センター史料館)
(左)第二高等中学校理化学講堂断面図
(右)東北帝国大学法文学部図書閲覧室立面図(現東北大学史料館)
いずれも東北大学史料館所蔵