コラム:「優雅で古風な舞」~薬莱神社三輪流神楽~

宮城県内には167もの神楽団体があり、特徴や流派などによってグループ分けされています。加美町の「県指定無形民俗文化財 薬莱神社三輪流神楽(やくらいじんじゃみわりゅうかぐら)」は、県内に4団体しか存在しない「異伝の法印神楽」と呼ばれるグループに属しています。法印神楽とは山伏(修験者)が伝えた神楽のことですが、その中でも中世芸能の面影を強く残す特徴をもつことから、他の法印神楽とは区別し「異伝」と呼ばれています。
三輪流神楽は、現存する県内の神楽の中で最も古い特徴を持つと言われており、15世紀初頭には祖型となる神楽が存在していたとみられています。中世神話の面影を残す台詞や、能風の摺り足、修験の呪法である手印を用いるところに特徴があり、「優雅で古風な舞」と称されています。
神楽に使用されている面も特徴的で、典型的な神楽面ではなく、能面や能面風のものが使用されています。江戸時代に製作されたものが多いですが、古いものでは慶長2年(1597)の墨書がある面(大べし見面)や、当時大崎地方を治めていた戦国大名である大崎氏から献納された面(尉面:じょうめん)も現存しています。これらの古い面は、現在でも実際に使用されており、神楽の見どころの一つとなっています。
三輪流神楽は大崎氏のみならず、後にこの地を治めた伊達氏からも厚い庇護を受けています。4代藩主伊達綱村の時の天和3年(1683)には、藩命により伊達氏の氏神である亀岡八幡宮(仙台市青葉区川内)に社家十人が移住し神楽を伝えており、さらに翌年、貞享元年(1684)には再び藩命を受け陸奥国一之宮である鹽竈神社に神楽を奉納しています。これらの出来事からは、三輪流神楽が藩を代表する神楽として認識されていたことが伺えます。
現在は、2年に一度、神社境内に舞台を作り、篝火(かがりび)を照明として神楽を舞う「篝火神楽」という行事が行われており、こちらは一般の方も見学が可能です。次回の開催は令和3年(2021)の夏になりますが、篝火のほの暗い舞台で繰り広げられる優雅で古風な舞を是非ご覧になってください。(吉田 桂 加美町教育委員会)