コラム:東北大学附属図書館所蔵仙台城下図の調査から

東北大学附属図書館所蔵の仙台城下図の調査を進めております。その対象資料の一つに狩野文庫の「仙臺城下之圖」があり、ここで少し紹介したいと思います。本資料は軸装されており、本紙は縦約44.5㎝、横約60.5㎝の大きさです。部分的ではあるものの仙台藩士の屋敷居住者や寺社の名称の記載があり、彩色された興味深いものです。
さらに本図には「文政六年癸未三月模写主 晶山楼」「同十一年戊子以鍋田舎人本寫 楓軒」と書かれ、作成経緯に関する情報がわかります。文政11年(1828)に「楓軒」なる人物が「鍋田舎人本」を写したこと、そしてもとは文政6年(1823)3月に「晶山楼」によって模写されたものであったと理解できます。「楓軒」は水戸藩士の小宮山昌秀(1764~1840)、「鍋田舎人」は磐城平藩士の鍋田三善(1778~1858)です。鍋田三善は晶山と号しました。つまり、文政6年3月に鍋田三善が模写した仙台城下図を、文政11年に小宮山昌秀が写したものといえます。両名ともに史料の探索・蒐集を精力的におこない、史書や地誌を編纂した人物で、交流があったことも知られています。
また、本図にある藩士の屋敷居住者名を分析すると、内容年代は安永7年(1778)から天明6年(1786)の間と推定でき、鍋田三善が模写した原図はこの時期に作成されたものであったと考えられます。
19世紀の近世日本は、史書や地誌が盛んに編纂された時代でした。そうした編纂過程で城下図も蒐集されたものといえます。本資料の内容についてさらに分析を進める必要がありますが、従来知られていた仙台藩政のために作成された城下図の内容との比較検討をおこなうことで、仙台城下図の研究を進めることができそうです。今回附属図書館で調査させていただいた他の仙台城下図の分析をはじめ、各地の模写本の所在調査もおこない、仙台藩の研究を進めることができればと考えております。(野本禎司)

※ここで紹介した狩野文庫の「仙臺城下之圖」は、東北大学附属図書館HPの東北大学デジタルコレクションで画像閲覧できます。
https://www.i-repository.net/il/meta_pub/G0000398tuldc_1100009025