コラム:古文書撮影の秘密兵器Ⅱ―大型横帳の撮影方法(後藤三夫)

大量の古文書撮影を実施する現場から、試行錯誤の結果、低コストで安定したデジタル撮影方法が「宮城方式」として生まれ、全国に広がりつつあることは先にご紹介しました。
歴史資料保全の撮影現場では、平面に伸ばせる古文書以外に厚物の大福帳(大型横帳)や大型図面、器物など撮影対象は多岐に亘ります。とくに大福帳は大きいので見開きでの撮影ではなく、左右のページごとの撮影になり、史料をレンズの真下にその都度置き換える必要があります。また左右の厚さの段差が大きく、高さをそろえ直す手間などで時間が相当かかります。
今回はこの問題を解決できる便利なスライダーを利用した撮影システムをご紹介します。この撮影方法の核になる秘密兵器は、スライダーを中心にした4点のパーツから構成されています。これは、2015年夏、NPO法人宮城歴史資料保全ネットワークにおいて確立された方式です(*1)。
ここでは、この撮影方法に必要となる①スライダー(カメラスタビライザー)、②カメラ位置補正治具(スライディングプレート)、③自由雲台、④紐の4点のパーツの詳細とそのシステム構築の方法について紹介します。詳細は、下記の付録(PDFファイル)にまとめましたので、ご参照ください。写真は、4点のパーツを組み立てたものを上面、下面、前面から見たもの、そしてカメラをセットした状態のものです。
スライダーを通常とは異なる方法で使用するという発想の転換により、大福帳を動かすのではなく、スライダーを利用してカメラを左右に移動させるだけで撮影することができます。これにより大幅に撮影時間が短縮され、撮影画像も安定しました。

【付録】「わかりやすい大福帳(大型横帳)の撮影システム」 → PDF

*1 ネットニュース249号(2015年10月18日)
「カメラスライダー」を活用したいわゆる「横長帳」撮影の新手法

249号 「カメラスライダー」を活用したいわゆる「横長帳」撮影の新手法