コラム:気象史料としての『承政院日記』(程永超)

 『承政院日記』は、朝鮮王朝や大韓帝国の官庁である承政院(王命の出納を司る機関、朝鮮国王の秘書室に相当)による記録であり、朝鮮国王の命令や文書、国王と臣下とのやりとりなどを日単位で記録した史料です。『朝鮮王朝実録』と並び、朝鮮時代を研究する上で最も重要な史料の一つであり、東洋史や日本史研究者にもよく知られています。
 一方、『承政院日記』は1623年から1910年までの288年間の気象観測を網羅的に記録しており、朝鮮半島の気象史料としても非常に貴重です。『承政院日記』の1日分の記録は、天気から始まり、場合によっては記事の最中に気象観測記録も含まれています。文末の写真は、現在ソウル大学奎章閣韓国学研究院に保存されている『承政院日記』の原本です。この写真では、日付の後に天気が記されています。残念ながら、この朝鮮半島の約300年分の天気記録はこれまで世界各地の気象学者などにあまり注目されてきませんでした。
 そこで私たちの研究チームは、『承政院日記』のテキストデータベース(https://sjw.history.go.kr/main.do)を利用して、機械可読の気象データセットを構築しました。具体的には、テキストマイニングの手法を用いて気象記述テキストから有効な気象情報を抽出し、それらをあらかじめ定義された気象カテゴリーにまとめました。さらに、朝鮮王朝の暦で記録された日付をグレゴリオ暦に変換し、データセットをより使いやすくしました。我々の研究チームでは、このデータセットを用いて、100年を超える長期的な気候変動の研究への応用を検討しているところです。『承政院日記』気象情報データセットは、インターネットで公開されています(doi:10.5281/zenodo.8382243)。データ抽出の過程については、下記の論文をご参照ください。(https://doi.org/10.1002/gdj3.227

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(写真)『承政院日記』に記録された天気情報(1623年5月8日)