コラム:「丸吉皆川家日誌」の公刊―仙台藩領の商家当主が見つめた江戸時代(佐藤大介)

 今回は、江戸時代には仙台藩領であった、磐井郡藤沢本郷(岩手県一関市・かつての藤沢町)の有力商家・丸吉(まるきち)皆川(みなかわ)家の当主が記した日誌について紹介します。
 丸吉皆川家は、江戸時代の後期には、「東山」と称された磐井郡東部の特産品であった紅花、煙草の集荷を行い、それぞれ京都や江戸方面に出荷して財をなしていました。幕末期には生糸や薬種、さらには鉄製品の取引にも携わっていました。
 4代目の当主であった久蔵は、天明飢饉の頃(天明3~4年:1783)から天保15年(1844)まで、その娘婿である6代目の喜平治は嘉永6年(1853)から明治6年(1873)の間、身の回りの出来事、仙台城下町や全国各地の出来事、さらには自然災害についての記事を書き残しました。原本は合わせて2100丁(頁)、約62万文字の記録です。
 2015年7月、丸吉皆川家の現当主である皆川龍一氏が所蔵している原本を保全。同時に、仙台地区で古文書解読に取り組んできた市民5名と「青葉山古文書の会」を結成。約5年半かけて解読を続けました。その成果を、2022年3月に「丸吉皆川家日誌 天保編」、23年3月に「幕末維新編」として公刊しています。詳細については「幕末維新編」の「あとがき」をご参照ください。
 江戸時代の大名では3番目の石高であった仙台藩領ですが、「大藩」としてのイメージに反して、基礎的な古文書資料の公刊は進んでいません。今回の記録は、一商家からの視点となりますが、「いつ」、「どこで」、「何が起こったか」という基本的な情報と、それらに個人や社会としてどのように向き合ったかを知るための大きな手がかりを提供してくれると考えます。多くの方にご活用いただければ幸いです。また、個人的には内容の分析をさらに進めるなどの普及を図って行きたいと考えております。
                                          (東北大学災害科学国際研究所)

 

◎東北大学リポジトリTOURより全文ダウンロードできます。
天保編
https://tohoku.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=137182&item_no=1&page_id=33&block_id=46

幕末維新編
https://tohoku.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=139447&item_no=1&page_id=33&block_id=46

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