6月10日:山形県立博物館令和5年度博物館講座①開催報告(竹原万雄)

 部門では山形県立博物館主催の博物館講座(全6回)のうち2回分の講師を担当しています。今年度第1回目の博物館講座が2023年6月10日に開催され、竹原が講師を務めました。当日は「近世村絵図を読み解く-村山郡寺津村(現・天童市寺津)を中心として-」と題し、同館所蔵の「寺津村絵図」を手掛かりに絵図を読み解く魅力をご紹介しました。
 寺津村は最上川と須川が合流する付近に位置しており、水害が頻繁に起こっていました。山形県立博物館には十数点の「寺津村絵図」が所蔵されていますが、その多くが水害により田畑などが流失した場所=川欠場を描いたものでした。それだけ水害に苦しんだ地域ということが想像できます。
 一方、『天童市史編集資料』に掲載された資料をみると、寺津村を含めた川欠が頻発する地域では、水害を機会に領主へ他村分の被害も報告することで多くの手当を受け取ったり、他村の耕地を横取りするような動きがみられました。頻発する川欠に絶望するのではなく、なんともたくましく、したたかに生きる百姓像がうかがえます。多く残された絵図も、百姓たちの主張を通すためのたくましさの証といえます。
 また、「寺津村絵図」には郷蔵と高札場が描かれていました。郷蔵は領主に納める年貢米を保管し、高札場は領主からの法令を掲げる場であり、村にとっても領主にとっても重要な場所でした。そのため、人びとが行き交う村の「中心」に設置され、近世の絵図をみると村のシンボルのように描かれたものが多く確認できます。
 それでは、かつての「中心」は現在はどうなっているのでしょう。過去の絵図と現在の地図を見比べてその場所を探すと、郵便局や交番になっていたり、道標の石碑が立っていたりします。もちろん、面影がなくなっていることもありますが、かつての「中心」だと想像してそこに立つと、違った景観がみえてくるかもしれません。
 当日は、原物の絵図までご用意いただき、配布資料だけではわかりにくい絵図の細かな部分までみていただくことができました。受講者の皆様や館長をはじめ同館職員の方々に改めて御礼を申し上げます。

博物館講座①チラシ PDFファイル