着任のご挨拶(シェプキン・ワシーリー)

 11月1日から客員准教授として着任いたしましたシェプキン・ワシーリーです。
 出身はロシア・イルクーツク州のシェレホフ町です。2007年にイルクーツク言語大学日本語学科を卒業し、サンクトペテルブルクにあるロシア科学アカデミー東洋古典籍研究所の歴史資料学博士課程に進み、2011年に博士号を取得して同研究所の下級研究員、研究員を経て上級研究員として勤めています。
 主軸となる研究テーマは日露関係史、特に近世日本と帝政ロシアの間の交流史です。この交流の主な舞台となった千島列島、北海道、サハリンなど、いわゆる「蝦夷地」と、日露間交流の媒介者となったアイヌ民族の歴史にも興味を持っています。また、ロシアに対する近世日本の態度を把握するにはその対外政策、対外知識、思想史なども考慮しなければならないと思い、研究してきました。2017年に上記の分野をテーマにした『北風―18世紀日本におけるロシアとアイヌ』(ロシア語)という拙稿を発表しました。なお、東洋古典籍研究所に保管されている近世・近代日本の古典籍や古文書の整理・目録化などを担当しており、コレクション形成史も研究しています。去年、その一部となるアイヌ民族関連の日本古典籍コレクションについて『日本人の目で見たアイヌ民族』(ロシア語)という拙稿を発表しました。
 当部門では、上記のテーマを、とくに最初の帝政ロシア使節が来日した後の、つまり19世紀に入ってからのロシアに関する知識普及やその対外政策への影響などを研究していきたいと思います。18世紀日本におけるロシアの知識や討究というと、まず林子平や工藤平助、仙台藩に深い関わりを持つ人物が頭に浮かぶでしょう。仙台にいながら、この二人の思想を継承した蘭学者や水戸学の思想家の遺稿をよりよく理解できると期待しております。
(ロシア科学アカデミー東洋古典籍研究所上級研究員、東北大学東北アジア研究センター客員准教授)