着任のご挨拶(根本みなみ)
4月より着任いたしました根本みなみです。
3月までは日本学術振興会の特別研究員として東京大学史料編纂所に所属し、近世大名家の家臣の内でも特に上級家臣の「家」運営について研究してまいりました。
現在関心を持っておりますのは、近世大名家における帰属集団としての「御家」とそこに所属する大名や家臣の「家」の関係性です。武士の「家」の帰属集団である「御家」は武士の「家」の行動を規制するだけではなく、その存続を守る役目も担うことが求められました。一方、「御家」の頂点にあるはずの大名家も「御家」に帰属する一つの「家」として、その行動を制限されることもあり、「御家」と「家」、大名や家臣の関係は一方通行なものではありませんでした。一つの出来事をとっても、大名の側・家臣の側と視点を変えることで、全く違う姿が見えてくることがあります。
私がこのように考える背景には、学生時代に授業を通じて伊達騒動について研究する機会を得たことがあります。仙台藩伊達家の御家騒動である伊達騒動は当事者それぞれの目にどのように映ったのか、また伊達家を取り巻く人々にはどのように映ったのか、その一つ一つを丹念に見ていくと、この事件が様々な性格を帯びていたことを知ることができます。歴史を研究するということは、一つの視点からだけ物事を眺めるのではなく、あらゆる視点から一つの物事をとらえ直すということです。その中では、地域の人々が自分の地域の歴史をどのようにとらえるのか、当事者の視点がとても重要になります。立場が変わることで、一つの出来事の異なる側面が浮かび上がってきた時、歴史学の面白さ・むずかしさを一層感じることが出来ます。
当部門では地域における史料保全や研究に力を入れており、私も業務を通じて、地域での歴史研究に携われることをとても楽しみにしております。今までの経験を活かして、当部門の研究に御役に立てるように努めてまいります。