開催報告:須賀川市立博物館テーマ展(荒武賢一朗)

2022年10月25日から11月27日まで、須賀川市立博物館令和4年度テーマ展「内藤家文書にみる須賀川の江戸時代」(主催:同館、部門)を開催いたしました。江戸時代の須賀川町は、奥州街道の宿場(在郷町)として繁栄するのですが、寛永20年(1643)以降は白河藩の支配を受けつつ、「自治都市」の性格が強いというのも特徴でした。
今回の展示で紹介した内藤家は、伊勢国からやってきた武士を先祖に持ち、天正18年(1590)に須賀川へ居住することになりました。その後、商業で成功を収めて郷士という町のリーダーになっていき、白河藩より「代官加役」という民政を担当する役職に任命されていきます。内藤家文書は、子孫から須賀川市立博物館に寄贈されており、町の運営や領主との関係、また町人たちの活動なども知ることのできる貴重な資料で、当主の肖像画などもあり興味津々です。
自治という観点から注目できるのは、町益金制度で有力な町人たちが出資をして、その運用によって困窮世帯へ子どもの養育金や凶作時の食料支援をおこなうほか、町内の道・橋・河川にかかわる土木事業を手がけていることです。つまり、領主に頼ることなく、自分たちで「町を動かす」ことが当然のように実施されていました。
当部門では、須賀川市立博物館や外部の研究者のみなさんと一緒に共同調査を進めていますが、これからも「人々の動きを知る」「地域の個性を発見する」といった視点で歴史資料を研究していきたいと考えています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

展示室のようす

◎『別冊史の杜』第7号 ⇒ PDF