コラム:土地台帳のインデックス(竹原万雄)
古文書整理をしていると、文字情報もさることながら、その形態にも興味をひかれます。今回は、「山形市村木沢文書」(村木沢コミュニティーセンター収蔵)を整理していた際に見つけた古文書をご紹介します。
【写真1】の横長の帳簿は、江戸時代の土地台帳です。土地の所有者ごとに、その人が持っている田畑が書き上げられています。帳簿の厚さは約9㎝。ぶ厚い土地台帳はそれほど珍しくないのですが、注目したいのはずらっと並んでいる複数の小さな木札です。
この帳簿には65件の所有者が並んでいます。そこから探したい所有者を見つけるのはなかなかの手間だったはずです。そこで木札が挟まれている紙面を見てみると、所有者名が書かれた紙面に木札が挟まれていました。例えば、【写真2】の紙面には「四 喜右衛門」とあり、喜右衛門が持つ田が書き上げられています。そこの木札には、小さいですが「喜」という字が書かれており、所有者名の先頭の文字が書かれていたことがわかります。つまり、木札が現代でいうインデックスの役割を果たしているようです。
木札ではなく紙で作られたインデックスもよく見かけます。また、【写真3】も同様の厚い土地台帳ですが、こちらは紙面の端に小さく名前が書かれています。帳簿の端をパラパラとめくると、次々と名前が出てくることになるので、そこから探したい所有者を見つけるという工夫がうかがえます。
土地台帳は土地所有の証拠となるため、地域でもよく残されています。見映えもするので、博物館で展示されていることもあります。そこには、今回ご紹介した以外の形態があるかもしれません。当時の人びとの文書利用のさまざまな工夫を探してみてください。
【写真1】「〔名寄帳〕」(山形市村木沢文書1-1-
【写真3】「田畑名寄帳」(山形市村木沢文書1-3-19-7)
◎参考URL
村木沢コミュニティセンター
http://www.yamagata-community.jp/~murakisawa/