コラム:自治体刊行物におけるマンガの活用(管野和博)

突然ですが、このコラムをお読みの皆様、日本歴史のマンガといえば何を想像しますか?
日本歴史のマンガは、主に小中学校向けの「学習漫画」とコミックスなどに描かれた「歴史漫画」に大別されます(夏目房之介・竹内オサム編『マンガ学入門』ミネルヴァ書房、2009年)。前者は教科書的な内容が特徴で、代表例として「学習まんが」シリーズ(講談社・学研・集英社・KADOKAWAなど)があります。一方、後者は「娯楽マンガ」ともいわれますが、人物や時代を背景としたものが多く、比較的史実に基づいたものや、そうでないものなどいろいろあります。
ちなみに筆者は、小学校の時に図書室で見た、「学習漫画」が印象に残っています。どこの出版社か忘れましたが、歴史人物図鑑に掲載されていた千々石ミゲルなどの天正遣欧使節のイラスト(肖像)が印象に残っています。この「学習漫画」はこれまで主に教育心理学の立場から研究が蓄積され、近年では「マンガ学」なる学問も誕生しています。
このように、日本歴史における「学習漫画」は確固たるジャンルを形成しているといえそうですが、近年ではやや異なる潮流がみられます。それは、出版社のマンガではなく、地方公共団体が刊行する歴史の本(図録やパンフレットなど)にマンガを掲載する動きで、特に埋蔵文化財(遺跡)での活用で顕著です(例:金沢市、図1)。本市でも平成30(2018)年に「マンガで読む まぼろしの国石背」を刊行したことがあります(図2)。
歴史におけるマンガは「ゆるキャラ」や歴史好きのタレントなどと合わせ、ポピュラー・カルチャー(大衆文化)の一部であるとともに、SDGsなどに代表される多様性にも配慮したものと考えられます。むろん、マンガという媒体だけで日本史を語ることはできませんし、マンガという表現媒体の問題もあります(活字離れやイメージが固定されがちになるなど)。しかしながら、日本史の教育普及・活用という観点からも今後、注目すべき分野と考えています。(須賀川市立博物館)

 

 

 

 

 

 

 

図1「加越国境城跡及び道」(金沢市、2016年)

 

 

 

 

 

 

 

図2「マンガで学ぶ まぼろしの国石背を知ろう!」(須賀川市、2018年)