コラム:一橋大学附属図書館所蔵「金原家文書」の紹介

一橋大学附属図書館に、金原家文書という史料群があります。これは、天竜川の治水などに尽力した金原明善(きんぱら めいぜん、1832-1923)とその子孫に関する史料の一群です。もとは、静岡県浜松市にある金原明善翁生家の裏にある石蔵と、生家と道を挟んで反対側にあった金原明善記念館に保管されていたのですが、2016年にご子孫の意向で一橋大学附属図書館に寄贈されました。寄贈後は、当時一橋大学に在学中であった筆者が中心となって学内外の有志で「金原家文書研究会」を立ち上げて整理を進め、2019年度までに仮目録を完成させました。現在は、状態の悪いものを除いた全ての史料について、原則公開しています。なお、この仮目録は、一橋大学附属図書館と浜松市立図書館中央図書館で閲覧することが出来ます。
史料整理によって、金原家文書には様々な史料が存在することが分かりました。例えば、金原が1896年(明治29)に北海道瀬棚郡に開設した金原農場に関する史料が挙げられます。具体的には、「金原農場土地所有権登記書類」(1896年作成)や「促成栽培並ニ苗床日誌」(1911年作成)などです。これらの史料は、日本近現代史における「開発」の問題を考える際の重要な手がかりです。その他にも、1968年(昭和43)に金原治山治水財団が編集し刊行した『金原明善資料』(上下巻)にも収録されていない歴史資料(例えば写真など)も数多く発見され、様々な角度から金原明善を研究することが出来るようになりました。
地域の史料が、地元ではなく東京の大学図書館にある――。一見、不思議なことのように思われるかもしれません。しかし、重要な点は、貴重な歴史資料が廃棄も「死蔵」もされずに保存され、研究資源として活用される道が残されたことです。私は、絶えず史料保存活動の意義を考えながら、遺された史料と向き合いつつ金原明善の研究を進めていきたいと考えています。
(伴野文亮 東北大学大学院文学研究科)

 

 

 

 

 

石蔵から搬出した金原家文書(一部)   整理された史料