コラム:資料と向き合い、地域と向き合う―名取市史編さんの現場から―(鈴木詩織)

名取市では、昭和33年(1958)10月1日の市制施行から60周年を迎えた平成30年(2018)、新たな市史の編さんに着手することが決まりました。令和4年度(2022)には市史編さん室が設置され、令和8年~12年度に、通史編3巻(原始・古代、中世・近世、近代・現代)、特別編2巻(名取の熊野、名取の暮らし)、普及版1巻の計6巻を刊行するため、さまざまな資料の調査や原稿編集などに取り組んでいます。
新『名取市史』では、昭和52年(1977)3月に刊行された旧『名取市史』以降、約半世紀にわたって積み重ねられてきた研究成果を取り入れるとともに、新たに発見・確認された資料も活用しながら、より豊かな地域の歴史を描くことを目指しています。その一環として、市史執筆の材料となる歴史資料の調査を日々行っています。市内の旧家や寺社に伝わる古文書をはじめ、行政資料、写真や地図などについて、市民の方から寄せられた情報をもとにしてお話を伺うとともに、資料が保管されている個人宅などで調査を行っています。
市内のお宅を訪ねると、「東日本大震災で蔵が壊れ、建て替えの際に中にあった資料も処分してしまった」というお話を伺うことが少なくありません。そのようなお話を聞くと、地域に残る歴史資料は、一度失われると二度と取り戻すことのできない貴重な財産であることを実感し、今回の名取市史編さんを契機として、地域に眠る資料を一つでも多く調査・記録し、名取の歴史を適切に保存・継承していくことの重要性を強く感じています。資料と向き合うことは、地域と向き合うことです。その積み重ねが、新しい『名取市史』の一頁一頁となり、未来の名取を支える財産になることを願いながら、日々調査・研究に取り組んでいます。(名取市教育委員会市史編さん室)

(写真1)資料調査の様子

(写真2)調査資料の一例(熊野本宮社寄贈資料)

※令和8年7月5日~9月20日、名取市歴史民俗資料館にてなとり市史企画展 「ナトリノクマノ 神と仏の信仰磁場」を開催しています。ぜひお越しください。
https://www.city.natori.miyagi.jp/page/43886.html